残余財産の分配とは?分配額から分配のタイミングまで詳しく解説
会社を清算する際は、残余財産の分配の方法やタイミングについて確認が必要です。株主は、残余財産を受け取る権利があります。ただし、種類株式の関係によって残余財産を受け取れない場合もあるなど、仕組みが若干複雑です。そこで今回は、残余財産の分配について、分配額から分配のタイミング、種類株式についてまで詳しくご紹介します。
残余財産の分配とは
残余財産とは、会社を清算する際に会社に残っている財産のことです。会社の持ち主は必ずしも経営者ではなく株主です。残余財産は清算人によって株主に分配されます。
残余財産の分配額
残余財産の分配額は、保有株式数によって決まります。保有株式数が多いほどに多くの残余財産が分配されます。ただし、種類株式が発行されている場合は、事前の取り決めによって残余財産が分配されなかったり、優先的に分配されたりします。
残余財産が分配されるタイミング
財産分与のタイミングは、会社の精算時です。原則、会社の負債を完済した後でなければ残余財産は分配できません。ただし、負債額の確定に時間がかかる場合は、返済に必要と認められる財産を残し、それ以外の残余財産を先行して分配できます。
残余財産の現物分配について
残余財産は、基本的に現金化して分配しますが、現物での分配も可能です。現物と金銭のどちらを選ぶかは、株主が自由に決定できます。まずは、金銭での分配請求権の行使ができる期間を定めます。同時に、基準以下の株式数しか持たない株主に対し、残余財産を割り当てるかどうかを決めましょう。そして、金銭での分配請求権を行使できる期日の20日前までに、その期日と「割り当てない基準株式数」を全株主に通知します。
そして、金銭分配請求権行使期限日の20日前までに、清算人が決定した行使期限日と残余財産の割り当てを行わない基準株式数を、すべての株主に通知します。期日までに金銭での分配請求権が行使された場合は、その株主に対して金銭で残余財産を分配する必要があります。
残余財産の分配後の手続き
会社の解散と負債の完済、残余財産の株主への分配が完了すれば、会社の清算はほぼ完了です。この後は、清算人が決算報告書を作成して株主総会を開き、承認を得ることになります。決算報告書には、次のように残余財産に関する事項も設けなければなりません。
- 資産の換価、債権の回収、その他の行為によって得た金額
- 債務の弁済と清算にかかった費用
- 残余財産の金額
- 1株当たりの残余財産分配額
株主総会で承認を得た後は、2週間以内に法務局へ清算結了の登記を行う他、税務署に清算結了の異動届出書に提出すれば、一連の手続きは完了です。
残余財産における種類株式について
種類株式とは、内容の異なる2種類以上の株式のことです。残余財産の分配において、次のような種類株式を定められます。
- 残余財産の分配が一切ない
- 普通株式よりも優先的に残余財産の分配を受けられる
- 普通株式よりも分配額が少額
このような種類株式を発行する理由は、より多くの出資を集めるためです。会社の経営状態の悪化によって精算することになっても、残余財産の分配において有利な種類株式を発行することで、その株主はより多くの投資額を回収できます。つまり、株主にとって出資のリスクを抑えられるため、より多くの出資が集まるのです。
種類株式の発行に必要な定款への記載について
種類株式の発行には、定款への記載が必要です。種類株式に付与する残余財産の分配に関する権利を定款で定めましょう。例えば、残余財産を一切分配しない種類株式を発行する場合は、「甲種株式を有する株主への残余財産の分配を行わない」と記載します。ただし、残余財産を分配しないことと、過剰金を配当しないことを兼ね揃えた種類株式の発行は会社法で禁止されています。
また、普通株式よりも多くの残余財産が分配される種類株式の発行においては、次のように記載します。
「甲種株式を有する株主に対し、普通株式を有する株主よりも1株金3千円を優先的に分配する」
普通株式よりも分配額が少ない種類株式のケースでは、定款に次のように記載します。
「普通株式を有する株主に対し、甲種株式を有する株主よりも1株金3千円を優先的に分配する」
種類株式の発行に必要な定款への記載を忘れないようにしましょう。
まとめ
残余財産は株主に分配すべき財産です。分配の方法やタイミングなどを把握しておき、会社の精算時のトラブルを防ぎましょう。また、種類株式についても理解を深め、定款にしかるべき内容を記載しておくことが大切です。会社の精算時における法的なサポートについては梅田パートナーズ法律事務所までお気軽にご相談ください。
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