会社(法人)の破産で社長(代表者)が避けるべき行動とは?
会社の破産では、社長が少しでも資産を手元に残そうとしたり自身が受ける被害を抑えようとしたりすることで、かえってペナルティーを受けるケースがあります。注意点を押さえたうえで、適切に行動することが大切です。今回は、法人破産で社長が避けるべき行動について詳しく解説します。
社長には破産手続きへの協力が義務付けられている
まず、会社の破産手続きにあたり、社長は全面的に協力することが法律で義務付けられています。
- 重要財産開示義務(破産法41条)
- 債権調査期日出頭義務(破産法121条3項、122条2項)
- 破産管財人に対する説明義務(破産法40条1項・2項) など
また、破産手続き中は裁判所の許可なしで居住地を離れることはできません。これは、破産手続き中は破産管財人に協力することが義務付けられているためです。
会社の破産で経営者が避けるべき行動
会社の破産の前段階、あるいは破産手続き中においては次の行動は避けましょう。
粉飾決算で不当に融資を受ける
粉飾決算によって不当に融資を受けた後に破産すると、金融機関は多額の損害を受けてしまいます。粉飾せずに正しい数値を反映した決算書を金融機関に提出していた場合、融資を受けられなかった可能性もあるでしょう。
この場合は、金融機関から損害賠償請求を受ける恐れがあります。
会社の資産を社長の名義に変更する
会社が破産するのであれば、自分の名義に変更して没収されるのを防ごうと考える方もいます。また、社長が会社に資金を貸し付けている場合は、倒産前に自身の借金だけ回収しようとするケースも少なくありません。
このような行為は否認権行使の対象となり、破産手続開始後に破産管財人から取り戻されてしまいます。
会社の資産を隠す・著しく低い価額で処分する
会社の資産を隠したり著しく低い価額で売却したりすると、詐欺破産罪という刑事罰を受ける恐れがあります。債権者が弁済を受けるはずの資産を隠したり低価格で売却したりすると、債権者が大きな損失を受けます。
破産は、借金を免除する代わりに会社の資産を処分して1円でも多く債権者に分配・配当する手続きです。このような行為は破産手続きの目的を果たせなくなるため、厳しく制限されています。
特定の取引先の借金を優先的に返済する
特定の取引先の借金を優先的に返済すると、否認権の行使によって取引先からお金を取り戻されてしまいます。お世話になったからといって優先的に返済すると、かえって迷惑をかけることになりかねません。
社長の自宅を配偶者に名義移転する
中小企業の社長は、会社の借金の連帯保証人になっているケースが多くみられます。この場合、会社が破産すると社長が代わりに返済することになりますが、通常は個人資産では完済が難しいため、会社破産と個人破産を同時に行うことが一般的です。
そうなれば、社長の自宅が没収されてしまうため、破産の直前に自宅を配偶者に名義移転する人もいます。これも否認権の行使によって自宅が取り戻されるため、行ってはいけません。
破産手続開始後の社長の生活への影響
破産手続き開始後は、職業や転居・旅行、郵便物などに制約を受けます。それぞれ詳しくみていきましょう。
職業における制約
破産手続開始から免責許可決定が出るまでの間は、次のような職業に従事できません。
- 警備員
- 弁護士・税理士・司法書士・公認会計士などの士業
- 宅地建物取引士
- 証券会社等の外務員
- 公証人
- 公正取引委員会の委員長および委員
- 保険外交員
転居・旅行における制約
破産手続き中に転居や旅行をする際は、事前に破産管財人に報告したうえで裁判所の許可を得る必要があります。免責許可決定が出た後に制限はありません。
郵便物における制約
破産手続開始後に破産者宛てに送られてきた郵便は、破産管財人へ転送されます。破産管財人がないようを確認し、問題なければ破産者へ渡される流れです。郵送物は送られてくる度に破産管財人が確認し、破産者へ随時送られます。
まとめ
会社破産で社長が行ってはいけない行為は、会社の財産を隠したり著しい価額で売却したりすることや、特定の取引先に優先的に返済することなどです。内容次第では刑事責任に問われたり損害賠償請求を受けたりするため、十分に注意しましょう。
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