民事再生すると社員は解雇になる?退職者を増やさないための注意点も解説

2023.1.9

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民事再生とは、民事再生法に基づき事業の再生を目的とした手続きです。民事再生すると社員は解雇しないといけないのか、新たに社員を雇用できなくなるのかなど、さまざまな疑問や不安を抱える方は多いでしょう。そこで本記事では、民事再生した際の社員の扱い、対応方法などについて詳しく解説します。

民事再生の目的

民事再生時の社員の取り扱いについて理解するためには、民事再生の基礎知識を習得する必要があります。民事再生の目的は、返済が困難な状況に陥っている債務者の事業を再生させるために、債権者の同意のもとで再生計画を策定・実行することです。

債権者の同意を得られなかったり、裁判社に再生不可と判断されたりした場合は、破産手続きに移行する可能性があります。

民事再生の手法

民事再生には、次の手法があります。

  • 自力再建型……自力で事業の立て直しを図る
  • スポンサー型……スポンサーの支援を受けて立て直しを図る
  • 清算型……営業譲渡した対価で債務を弁済する

民事再生時の社員の扱い

民事再生時の社員の扱いについて、押さえておくべきポイントを紹介します。

民事再生しても解雇する必要はない

民事再生手続きは会社の立て直しを目的としているため、社員の解雇は必要ありません。会社の存続・再生には、利益を生み出したり会社を維持したりする社員が必須です。そのため、社員をむやみに解雇すると民事再生が失敗に終わる可能性が高まります。

ただし、スポンサー型の場合は、スポンサーから「リストラをするのであれば支援する」などと条件を出されると、やむを得ず解雇することもあるでしょう。また、営業譲渡による精算についても、譲渡対象にならない社員は解雇することになります。譲渡の条件に社員の雇用継続を掲げ、先方が承認するのであれば社員の雇用を維持できるでしょう。

未払い給与は優先的に支払う必要がある

民事再生手続きによって、債務の弁済に優先順位が定められます。社員の給与は「一般優先債権」の「労働債権」にあたるため、優先的に支払う必要があります。

民事再生手続きが始まる日の前日以前の未払い給料は一般優先債権のため、借入金や買掛金よりも優先的に弁済します。民事再生手続きが始まった日以降に発生した給料は「共益債権」に該当し、随時弁済することになります。

退職金も優先的に弁済する

退職金も給与の扱いとなるため、優先的に弁済されます。民事再生手続きが始まる日の前日以前に退職した場合は、退職金が一般優先債権に該当するため、借入金や買掛金よりも優先的に弁済する必要があります。民事再生手続きが始まった日以降に退職した場合は、退職金は「共益債権」に該当し、随時弁済することになります。

民事再生における人件費の削減方法

民事再生手続きによって会社を建て直すには、人件費の削減は避けて通ることはできないでしょう。経費の大部分を占めているケースが多いため、優先的に見直すべきものです。人件費の削減方法について詳しく解説します。

労働条件を変更する

労働条件を変更し、少しでも人件費を減らす方法があります。例えば、次のように労働条件を変更します。

  • 給与の減額
  • 賞与のカット
  • 福利厚生や手当の中止
  • 退職金制度の廃止
  • 定期昇給制度の停止
  • 労働時間の短縮

ただし、社員に不利益が及ぶ労働条件の変更は、会社の一存では実行できません。社員と面談し、個別で同意を得る必要があります。

解雇する

解雇によって人件費を大きく削減できます。

ただし、解雇は以下4つの要素において合理的である場合にのみ行えます。

  • 人員整理の必要性
  • 解雇回避のための努力
  • 解雇対象者選定の合理性
  • 解雇手続きを適切に踏む

「民事再生によって企業を再建するための人員整理」では、要件を満たすことができないでしょう。まずは、希望退職者を募集したり、退職勧奨したりして解雇以外の方法を模索する必要があります。また、一方的に解雇を言い渡すのではなく、従業員との協議も必要です。

退職者を増やさないための注意点

解雇すると、他の社員まで退職する恐れがあります。そうではなくとも、民事再生すると社員の不安をあおり、退職者が増える可能性が考えられます。退職者が増えると事業継続が困難になるため、社員の理解・協力を得るために施策を立てることが大切です。

社員1人ひとりと面談し、会社の状況を伝えたうえで再建に向けて協力してほしい旨を伝えましょう。

まとめ

民事再生をしても社員は解雇になりませんが、一部のケースではやむを得ず解雇することになるでしょう。社員は会社を建て直すために欠かせない存在のため、むやみに解雇や労働条件を変更するのではなく、理解・協力を得られるように対応したいところです。民事再生をはじめ、会社の再建や破産を検討している方は、梅田パートナーズ法律事務所までお気軽にご相談ください。

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この記事を監修した弁護士

弁護士 西村 雄大
梅田パートナーズ法律事務所

大阪弁護士会【登録番号 49195】

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代表弁護士

西村 雄大

弁護士の西村 雄大と申します。これまで「弁護士」という職業は、一般的にどこか取っ付き難い職業として認知されていたのではないかと思います。
今はインターネットなどを通じて、ある程度の知識は誰でも取得できるようになりました。法律に関しても同じです。
このような時代だからこそ、弁護士に頼んでよかったと思っていただけるよう、プラスアルファの情報・一つ上のサービスを心掛けて対応します。

法人破産申立て実践マニュアル〔第2版〕

弊所代表弁護士の西村雄大が「法人破産」に関する書籍に著書(共著)として参加し出版しております。

経 歴

2010
京都大学 卒業
2012
神戸大学法科大学院 卒業
2012
司法研修所
2013
弁護士 登録
2014
中小企業診断士 登録
2014
梅田法律事務所 設立
2015
経営革新等支援機関 認定
2017
梅田パートナーズ法律事務所 改称

資格・登録等

所属団体

テレビ出演

・2024年 MBS 毎日放送様の「よんチャンTV」にて、「船井電機 突然の破産」についてコメント出演しました。

・2022年 MBS 毎日放送様の「よんチャンTV」にて、「スーパーマーケット ツジトミの倒産」についてコメント出演しました。

著書および論文名

  • ・著書(共著):法人破産申立て実践マニュアル(野村剛司 編著/青林書院)
  • ・法学セミナー平成26年10月号「倒産法の魅力と倒産法の学修」
  • ・物流業界の未来を創る雑誌「物流新時代」にて「西村弁護士の法律相談室」を連載

事務所概要

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