破産した会社の従業員の未払い給与の取り扱いと救済措置

2021.10.18

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会社が破産した場合、従業員の未払い給与はどのように取り扱うのか気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。取引先や従業員に迷惑がかかることを懸念し、なかなか破産を決断できない方もいらっしゃるでしょう。そこで今回は、破産した会社の従業員の未払い給与の取り扱いと、給与を支払えなかった場合の救済措置について詳しくご紹介します。

未払い給与や退職金などの取り扱い

従業員の未払い給与や退職金などは、次のように取り扱います。

給料

従業員の未払い給与は、財団債権に該当します。債権の優先順位は、財団債権、優先的破産債権、一般の破産債権、劣後的破産債権です。つまり、従業員の未払い給与は最優先で支払う必要があります。ただし、財団債権に該当するのは、破産手続きを開始した日から3ヶ月前までの分です。それ以前の未払い給与は優先的破産債権です。

未払い給料がある状態で従業員を解雇したケースにおいて、破産の申し立てが遅れると従業員に迷惑がかかるため、速やかに申し立てることが重要です。

退職金

会社の就業規則に退職金規程が記載されていない場合は、退職金を支払う必要はありません。退職金規程があり、退職金が支払われる条件を満たしている場合は、退職前3ヶ月の給料の総額と破産手続きを開始した日から3ヶ月前までの給料の総額のうち、多い方の額を支払うことになります。未払い給与と同じく財団債権となるため、最優先で支払うべきものです。また、退職金共済による積立を行っている場合の取り扱いについては、弁護士に確認を取りましょう。

解雇予告手当

解雇予告手当とは、即時に解雇するケース、予告するものの法律で定められる予告期間に満たないケースに支払う必要がある手当です。解雇予告手当を支払えない場合、未払いの扱いとなります。解雇予告手当の取り扱いは裁判所で異なるため、管轄の裁判所へ問い合わせましょう。ちなみに東京地裁では、破産手続きを開始した日から3ヶ月の間に解雇の意思表示をした場合、未払いの解雇予告手当は財団債権として扱います。

未払賃金立替払制度

未払賃金立替払制度とは、賃金が支払われないまま退職せざるを得ない労働者に対し、未払賃金の一部を立て替える制度です。独立行政法人労働者健康福祉機構が立て替えます。この制度は、すべての労働者が利用できるわけではありません。立替払いを受けられる人、金額について詳しく見ていきましょう。

立替払いを受けられる人

未払賃金立替払制度を利用できるのは、会社の破産申立日の6ヶ月前~2年前までの間に退職した労働者です。退職から6ヶ月以上が経過すると制度の対象外となるため、従業員に迷惑をかけないようにするには、速やかに破産を申し立てる必要があります。

立替払いの請求期限

未払賃金の立替払いを請求できるのは、破産手続開始決定の日の翌日から2年です。破産申立日とは異なる点に注意しましょう。

立替払いを受けられる金額

立替払いの金額は、退職日の6ヶ月前よりも後に支払日が到来している給与と退職金です。ボーナスや解雇予告手当は同制度の対象外です。立替払いの金額は、未払賃金の総額の8割ですが、下記のように上限額が定められています。

45歳以上……296万円
30歳以上45歳未満……176万円
30歳未満……88万円

例えば、月給30万円で3ヶ月分の給与が未払いの30歳未満の労働者は、90万円のうち88万円のみ立て替えられます。差額の2万円の損失は埋めることができません。やはり、会社が未払い給与を全額支払えることが最良の結果と言えます。

未払賃金立替払制度を紹介することが大切

未払賃金立替払制度は、会社の破産が原因で賃金が支払われずに退職した労働者を救済する制度です。しかし、その知名度は決して高いとは言えません。中には、生活に困窮して転職活動もままならない労働者もいます。破産する会社の責任者としては、未払賃金立替払制度の存在を労働者に伝えておきたいところでしょう。

全額を立て替えられるとは限りませんが、生活に困窮して立て直すことが難しくなる事態を防げる可能性があります。破産によって解雇することに申し訳ない気持ちを持つ経営者は少なくありません。未払い給与の支払いが難しい場合は、せめて未払賃金立替払制度を紹介することが大切です。

まとめ

破産した会社の未払い給与や退職金は、最優先に支払われるものです。しかし、会社に余力がない場合は、支払うことができません。未払賃金立替払制度の存在を労働者に伝えて、少しでも負担を減らすことが大切です。破産手続きや未払い給与の支払いなどのサポートをご希望の方は梅田パートナーズ法律事務所までご相談ください。

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この記事を監修した弁護士

弁護士 西村 雄大
梅田パートナーズ法律事務所

大阪弁護士会【登録番号 49195】

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代表弁護士

西村 雄大

弁護士の西村 雄大と申します。これまで「弁護士」という職業は、一般的にどこか取っ付き難い職業として認知されていたのではないかと思います。
今はインターネットなどを通じて、ある程度の知識は誰でも取得できるようになりました。法律に関しても同じです。
このような時代だからこそ、弁護士に頼んでよかったと思っていただけるよう、プラスアルファの情報・一つ上のサービスを心掛けて対応します。

法人破産申立て実践マニュアル〔第2版〕

弊所代表弁護士の西村雄大が「法人破産」に関する書籍に著書(共著)として参加し出版しております。

経 歴

2010
京都大学 卒業
2012
神戸大学法科大学院 卒業
2012
司法研修所
2013
弁護士 登録
2014
中小企業診断士 登録
2014
梅田法律事務所 設立
2015
経営革新等支援機関 認定
2017
梅田パートナーズ法律事務所 改称

資格・登録等

所属団体

テレビ出演

・2024年 MBS 毎日放送様の「よんチャンTV」にて、「船井電機 突然の破産」についてコメント出演しました。

・2022年 MBS 毎日放送様の「よんチャンTV」にて、「スーパーマーケット ツジトミの倒産」についてコメント出演しました。

著書および論文名

  • ・著書(共著):法人破産申立て実践マニュアル(野村剛司 編著/青林書院)
  • ・法学セミナー平成26年10月号「倒産法の魅力と倒産法の学修」
  • ・物流業界の未来を創る雑誌「物流新時代」にて「西村弁護士の法律相談室」を連載

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