特別受益とは?生前贈与の持ち戻しやその計算方法も解説
複数の相続人がいる場合、生前贈与や遺贈などによる特別受益があったことで持ち戻しが行われるケースがあります。持ち戻し計算を適切に行い、遺産分割をスムーズに進めるためには、弁護士のサポートが不可欠です。
本記事では、特別受益の意味や生前贈与の持ち戻しとその計算方法などについて詳しく解説します。
特別受益とは
特別受益とは、複数の相続人がいる場合に、一部の相続人が生前に被相続人から受け取った贈与や遺贈、死因贈与などの利益を指します。この特別受益は、相続時において複雑な問題を引き起こす可能性があります。
例えば、ある相続人が被相続人から生前に財産を受け取っていた場合、他の相続人たちがその分を無視して通常の遺産分割を行うと、不公平感が生じるかもしれません。特別受益を考慮して遺産分割を行うことで、公平かつ納得のいく形で相続財産を分割できます。
具体的な例を挙げましょう。A、B、Cの三人の子どもがいるとします。父親がAに特定の不動産を贈与した場合、この贈与が特別受益となります。相続の際、この特別受益を考慮に入れ、残る財産を適正に分割することで、各相続人が公平に相続できるのです。
持ち戻し期間
特別受益の持ち戻しには、かつては時効が設定されていませんでした。これは、被相続人が数十年前に行った贈与に対しても特別受益として持ち戻しの対象とされていたことを示しています。
しかし、2019年の法改正により、遺留分の計算における特別受益の持ち戻しには10年という期限が設定されました。つまり、被相続人が亡くなる10年以上前に行われた贈与については、特別受益としての持ち戻し対象から外れるようになりました。
この期限が関係するのは、主に遺留分を計算する際の特別受益の持ち戻しに適用されます。一方で、通常の遺産分割協議において、具体的な相続分を算定する際には、依然として特別受益の持ち戻しに関する期間制限は適用されません。
特別受益の対象
特別受益の対象は次のとおりです。
結婚持参金および支度金
結婚持参金および支度金は、基本的に特別受益の対象です。
一方で、結婚に関わる挙式費用や結納金については異なります。これらの費用は儀礼的な側面や慣行に基づくものとして捉えられることがあります。したがって、特別受益には該当しないものと判断されます。
事業資金の贈与
事業を継承する子どもに対する事業用資産の贈与は、特別受益に該当します。
ただし、このような贈与が特別受益に該当すると、事業の継続が難しくなる可能性があります。事業の引き継ぎを検討する際には、特別受益に関する対策を十分に行い、トラブルの回避に努めることが大切です。
金銭・有価証券・金銭債権
金銭や有価証券、金銭債権の贈与が特別受益に該当するかどうかは、その金額や価値が一般的な相場を超えるかどうかに依存します。
例えば、ごく一般的な小遣いや慰労金の場合は、通常の生活範囲内での贈与であるため特別受益には含まれません。しかし、相続人にとって大きな価値を持つ金銭、有価証券、金銭債権を贈与した場合は、特別受益として評価される可能性が高まります。
借地権
借地権に関する特別受益は、被相続人の所有地に建物があり、その土地を相続人が借りている場合に発生します。
例えば、被相続人の土地に建っている建物を相続人が借りて使用している場合、借地権が設定されていると見なされ、相続人に対して借地権相当額の贈与があったと考えられます。これは特別受益に該当し、相続財産の計算に影響を与える可能性があります。
また、借地権名義を被相続人から相続人に書き換えた場合も、相続人に対する特別受益と見なされます。この際、借地権相当額が贈与の対象となります。
ただし、借地権者が相場の権利金やその他の費用を支払っている場合、または権利を取得する際に登記費用や対価を支払っている場合は、これらの支出を借地権相当額から差し引いた金額が特別受益とみなされることがあります。
特別受益の計算方法
まずは、「みなし財産」を計算します。
相続開始時の財産+特別受益とされる生前贈与額=みなし相続財産
続いて相続人の相続分を計算します。
特別受益者ではない相続人の場合の計算式は「みなし相続財産」×法定相続分
特別受益者の相続人の場合の計算式は「みなし相続財産」×法定相続分-特別受益の財産額
特別受益における財産の評価方法は、異なる種類の贈与に応じて検討する必要があります。
土地は相続開始時の時価、建物は相続開始時の時価とする説と、贈与時の価格とする説があります。
金銭については贈与時と相続開始時に貨幣価値の変動があるのであれば、総務省統計局の消費者物価指数をはじめとする公共性が高い指数を参考にして、贈与時の金額を相続開始時の貨幣価値に換算します。
株式は、相続開始時の時価が基準とされます。
まとめ
特別受益の問題は、なるべく事前に対策しておくことが大切です。梅田パートナーズ法律事務所では円滑な遺産相続のための遺言書作成や各種対策のサポートをしております。まずはお気軽にご相談ください。
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2014 | 梅田法律事務所 設立 |
2015 | 経営革新等支援機関 認定 |
2016 | 梅田パートナーズ法律事務所 改称 |
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著書および論文名 | ・著書(共著):法人破産申立て実践マニュアル(野村剛司 編著/青林書院) ・法学セミナー平成26年10月号「倒産法の魅力と倒産法の学修」 ・物流業界の未来を創る雑誌「物流新時代」にて「西村弁護士の法律相談室」を連載 |
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