特別受益証明書とは?効果や必要性から利用できる手続きまで解説
特別受益証明書は、特別受益を得た相続人の相続分が0になることを証明する書類です。生前に贈与や遺贈で財産を譲り受けた場合、相続発生時に他の相続人から特別受益の存在を指摘されると相続分が減る可能性があります。反対に、他の相続人が特別受益を受けている場合は、それを主張すれば自身の相続分が増えることもあるのです。
今回は、特別受益証明書の効果や必要性などについて詳しく解説します。
特別受益証明書とは
特別受益証明書(相続分不存在証明書)とは、多額の特別受益を得たことで相続分がない事実を証明する書類のことです。特別受益とは、一部の相続人が被相続人から生前に贈与や遺贈の形で財産を受け取って得た利益のことです。
特別受益を受けた場合、その相続人の取得分を特別受益の額に応じて減額する必要があるため、次の計算式で特別受益者の相続分を算定します。
遺産総額+相続人全員の特別受益の合計×該当する相続人の法定相続分または指定相続分-該当する相続人の特別受益
上記の計算式で答えが0以下になる場合は、その特別受益者の相続分はありません。
特別受益証明書の必要性
特別受益証明書を利用することで、遺産分割協議書への署名捺印が不要になります。遺産分割協議書には相続人全員の署名捺印が必要ですが、特別受益証明書に署名捺印した相続人は遺産分割協議書に署名捺印する必要がありません。
例えば、3人の相続人のうち1人が特別受益証明書に署名捺印した場合、遺産分割協議書に署名捺印するのは残りの2人のみです。ここで気になるのが、わざわざ特別受益証明書に署名捺印しなくても、遺産分割協議書に署名捺印すればよいのでは?ということでしょう。
特別受益証明書に署名捺印した人物は、遺産分割協議書の内容を見る必要がありません。逆に言えば、特別受益証明書に署名捺印をした人物に、遺産の内容を知られないようにできます。特別受益証明書を利用しない場合は、遺産分割協議書に全員の署名捺印が必要になるため、相続分が0の人物にも遺産分割の内容が知られてしまいます。
特別受益証明書を利用するメリット
特別受益証明書は、特別受益によって相続分が0の人物に遺産分割の内容を知られないようにするためのものです。また、未成年の相続人に相続放棄させたい場合にも利用できます。
未成年者は遺産分割協議書に署名捺印できないため、代わりに法定代理人となる親権者が署名捺印をします。
相続発生後、いったん相続人全員が遺産を共有している「共同相続人」になるのですが、親権者がそれに該当する場合は、家庭裁判所から特別代理人の選任を受けなければなりません。その際に提出する遺産分割協議書の内容が未成年者にとって不利な内容の場合、特別代理人になることは通常認められません。
一方、特別受益証明書への署名捺印であれば、未成年者にも認められています。
【関連コラム:成年後見人とは?役割・手続きの流れ・成年後見監督人について解説】
特別受益証明書を利用できる手続き
特別受益証明書は、次の手続きで利用できます。
相続税申告
特別受益証明書を相続税申告に利用できるケースは限られています。
特別受益証明書の内容に基づいて財産を相続したことを証明する書類として、「特別受益財産の明細を記載した書類」や「登記事項証明書」など、財産の名義が相続人に変更されたことを確認できる書類の提出があった場合にのみ、特別受益証明書を相続税申告に利用できます。
また、相続税申告に利用する場合は、印鑑登録した実印による捺印と印鑑証明書の添付が必要です。
代襲相続
代襲相続とは、相続人になる予定の人物が相続開始前に死亡・欠格・廃除によって相続権を失った場合、その子どもが変わりに相続することです。代襲相続を受ける人物に多額の特別受益がある場合は、代襲相続人全員の署名捺印による特別受益証明書を作成できます。
【関連コラム:兄弟姉妹・甥姪への代襲相続とは?条件・遺産割合・注意点などを解説】
数次相続
数次相続とは、相続人が手続き終了前に死亡し、次の相続が開始することです。例えば、祖父が亡くなり娘である母が財産を相続する予定であったものの、相続手続きが完了する前に亡くなった場合が該当します。
亡くなった相続人全員の署名捺印をした特別受益証明書を利用できます。ただし、提出先によっては受け付けていない可能性があるため事前に確認が必要です。
まとめ
特別受益証明書は、特別受益を受けたことで財産分が0になることを証明する書類です。利用するシーンは限定的であるものの、利用すべきときに正しく作成できるように知識を習得しておくとよいでしょう。梅田パートナーズ法律事務所では、特別受益証明書の作成はもちろん、遺産相続に関してトータル的にサポートしております。まずはお気軽にご相談ください。
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