法人破産における破産財団とは?種類や注意点について解説
法人の破産手続きにおいては、法人・会社の一切の財産が「破産財団」として扱われ、破産管財人が換価処分して債権者に弁済・配当します。法人破産では、個人破産のように一定額の現金などは残せないため注意しましょう。本記事では、法人破産における破産財団について詳しく解説します。
法人破産における破産財団とは
破産財団とは、破産者の財産・相続財産・信託財産のことで、その全てを破産管財人が管理・処分する権利を有します。そもそも破産手続きは、破産者が持つ財産を全て現金に換えて債権者に弁済・配当する手続きです。
債権者としては、少しでも多くの債権を回収したいところですが、その原資は法人が持つ財産のみです。財産を破産者自身が管理できる状況では、財産隠しや処分などによって債権者の利益が害される揃えがあるため、裁判所が選任した破産管財人が管理・処分するのです。
なお、破産財団という名称からは団体をイメージできますが、実際には破産者の財産の集合体を意味します。
破産財団の種類
破産財団には、次の3つの種類があります。
- 法定財団
- 現有財団
- 配当財団
法定財団とは、犯罪団のあるべき姿を示す概念であり、破産管財人はこの概念になるべく近づける形で破産財団を形成します。ただし、破産財団に組み入れるべき財産であるものの、回収や管理が現実的に難しいものに関しては、組み入れられないケースもあります。
現有財団は、破産管財人が実際に管理している破産財団のことです。そして、現有財団を金銭に換えて債権者に弁済・配当する場合において、その金銭そのもののことを配当財団といいます。
破産財団に含まれる財産とは
法人破産における「破産財団に含まれる財産」とは、法人・会社が破産手続開始時に有していた全ての財産です。所有しているオフィスビルや社用車はもちろん、権利や債権も含まれます。
また、ここでいう債権には、将来的に得ることができるお金や物の請求権も含まれる点に注意が必要です。さらに、対象となる財産が国外に存在していたとしても破産財団に組み入れることになります。
これらの他に見落とされやすいのが、会社の事業が換価処分され、破産財団に組み入れられる場合があることです。第三者に事業譲渡する際に、対価として現金を受け取ります。破産するケースにおいては事業が赤字であることが多いものの、黒字化の可能性があったり相乗効果を期待できたりする場合は、買い手がつくことがあります。
法人破産においては自由財産が認められない
自由財産とは、破産しても換価処分をされない財産のことです。個人の破産においては、99万円以下の現金や生活必需品などの自由財産が認められています。一方、法人破産においては自由財産が認められません。
それでは、法人破産では代表者の現金や生活必需品などが換価されてしまうのではないかと思うかもしれませんが、法人と代表者個人は別人格として扱われ、法人破産の影響は一切受けません。
そのため、代表者個人の資産が没収されるような心配はないのです。ただし、代表者が会社の借金の保証人になっている場合は、法人破産の際に代表者が借金を肩代わりすることになります。法人の借金は個人資産では返済できないほどに多額なケースが多いため、法人破産と同時に代表者個人の破産も進めることになる可能性が高いでしょう。
破産財団からの債権者への弁済・配当
債権には、財団債権と破産債権があり、財団債権が優先的に弁済・配当されます。財団債権の中でも優先されるのが、破産管財業務に必要な費用と破産管財人が受け取る報酬です。これらを弁済しても残る場合には、税金や労働債権などが弁済されます。
そして、財団債権を弁済しても残る場合には、破産債権の中でも優先的破産債権、一般の破産債権、劣後的破産債権、約定劣後破産債権の順に弁済・配当を行います。
- 優先的破産債権……共益費用や雇用関係の請求権など
- 一般の破産債権……金融機関からの借入、買掛金など
- 劣後的破産債権……借金の遅延損害金や延滞金、延滞税、破産手続開始後に原因が起きた租税、罰金など
- 約定劣後破産債権……弁済・配当の優先順位が劣後的破産債権よりも後になる旨について破産手続開始前に合意された債権
このように、法人破産における弁済・配当は複雑な面があるため、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
法人破産における破産財団とは、債権者に弁済・配当するために換価処分する財産の集合体のことです。法人破産は自己破産とは異なり、自由財産が認められていません。破産手続きに関しても複雑な部分が多いため、まずは信頼できる弁護士に相談することをおすすめします。
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