家族へ株式を譲渡するには?相続・贈与・売買の進め方と失敗しないための実務ポイント

2025.12.24

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中小企業の事業承継において、経営権を安定的に引き継ぐために欠かせないのが「株式の承継」です。特に、親から子へ、あるいは家族間で株式を移転する場合は、第三者への譲渡とは異なる税務・法務上の注意点が数多く存在します。

家族への株式譲渡には、「相続」「贈与」「売買」という3つの方法がありますが、それぞれで課税される税金や手続き、リスクは大きく異なります。方法を誤ると、想定外の税負担が発生したり、親族間トラブルに発展したりする可能性も否定できません。

本記事では、すでに家族への株式譲渡を検討している、もしくは実行を視野に入れている経営者に向けて、株式譲渡の基本から、方法別の流れ、税務上のポイント、注意点までを実務目線で解説します。

この記事の監修者

弁護士法人 梅田パートナーズ法律事務所
代表弁護士 西村 雄大

資格・登録機関
所属団体

家族へ株式を譲渡する3つの方法

家族間で株式を移転する場合、主な方法は「相続」「贈与」「売買」の3つです。どの方法を選択するかによって、税負担や手続きの難易度、承継のタイミングが大きく変わります。

相続による株式譲渡

相続は、経営者が亡くなったタイミングで株式が後継者へ移転する方法です。相続税の対象となり、株式を含む相続財産の合計額が、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えた部分に課税されます。

相続による承継では、資金の準備が不要である一方、発生時期を選べない点や、遺留分への配慮が不可欠である点が課題です。後継者以外の相続人がいる場合、株式が分散すると経営に支障をきたす恐れがあるため、遺言書の作成が重要となります。

贈与による株式譲渡

贈与は、経営者が生前に後継者へ株式を移転する方法です。贈与税の対象となり、年間110万円まで非課税となる「暦年贈与」や、最大2,500万円まで非課税枠を使える「相続時精算課税制度」を活用できます。

贈与のメリットは、経営者の意思を反映したタイミングで承継できる点にあります。ただし、制度の選択を誤ると高額な贈与税が発生する可能性があり、暦年贈与の場合は、贈与後7年以内に贈与者が死亡すると相続財産に加算される点にも注意が必要です。

売買による株式譲渡

売買は、後継者が対価を支払って株式を取得する方法です。譲渡者には、譲渡益に対して譲渡所得税(所得税・住民税)が課されますが、遺留分の問題が生じにくく、権利関係を明確にしやすいという利点があります。

一方で、家族間取引であっても適正価格での売買が求められます。著しく低い価格で取引した場合、差額が贈与とみなされ、贈与税が課されるおそれがあります。

家族間の株式譲渡で発生する税金

株式譲渡の方法によって、課税される税金の種類は異なります。税務上の取り扱いを正しく理解しておくことが、承継後のトラブル防止につながります。

贈与税

贈与による株式譲渡では、基礎控除額110万円を超える部分に贈与税が課されます。税率は10%〜55%の累進課税で、直系尊属から成人した子への贈与は、特例税率が適用される場合があります。

また、相続時精算課税制度を選択すると、2,500万円まで贈与税はかかりませんが、将来の相続時に合算して精算される点を理解しておく必要があります。

相続税

相続による株式取得では、相続税が課されます。基礎控除の範囲内であれば非課税となりますが、非上場株式は評価額が高くなりやすいため、事前の株価評価が重要です。

譲渡所得税

売買で株式を譲渡した場合、譲渡益に対して申告分離課税が適用され、税率は原則20%(復興特別所得税を含めると20.315%)となります。

税負担を抑えるために検討したい制度

家族間の株式譲渡では、制度を適切に活用することで税負担を大きく軽減できる場合があります。

事業承継税制の活用

事業承継税制は、一定の要件を満たすことで、贈与税や相続税の納税を猶予または免除できる制度です。非上場株式を対象とし、後継者が事業を継続することが前提となります。

特例措置の適用期限が設けられているため、利用を検討する場合は早めの準備が不可欠です。

生前贈与の分割活用

暦年贈与を活用し、毎年少しずつ株式を移転することで、相続時の財産総額を抑える方法もあります。ただし、定期贈与とみなされないよう、贈与の都度意思確認と書面化を行うことが重要です。

家族間で株式譲渡を行う際の手続きの流れ

株式譲渡の手続きは、方法によって異なりますが、共通して慎重な対応が求められます。

相続の場合の流れ

遺言書または遺産分割協議により株式の取得者を決定し、発行会社へ名義変更を請求します。株式の分散を防ぐため、事前の遺言対策が重要です。

贈与の場合の流れ

株式を適正に評価したうえで贈与契約書を作成し、名義変更を行います。税務申告の根拠として、契約書の作成は必須と考えるべきでしょう。

売買の場合の流れ

譲渡制限付株式の場合、会社の承認を得たうえで売買契約を締結し、株主名簿の書き換えを行います。契約条件は書面で明確に定めることが重要です。

家族間の株式譲渡で注意すべきポイント

家族間だからこそ、形式や評価を曖昧にするとリスクが高まります。

売買では適正価格を設定する

著しく低い価格での売買は、税務上「贈与」と判断される可能性があります。特に非上場株式は評価方法が複雑なため、専門家による算定が欠かせません。

専門家と連携して進める

株式譲渡では、税務・法務・評価のすべてが絡み合います。事業承継を円滑に進めるためにも、税理士や弁護士などの専門家に相談しながら進めることが望ましいでしょう。

まとめ

家族への株式譲渡には、「相続」「贈与」「売買」という3つの方法があります。どの方法が最適かは、後継者の状況や会社の財務内容、経営者の意向によって異なります。

重要なのは、株式を渡すこと自体を目的にするのではなく、安定した事業承継を実現するための手段として捉えることです。将来のトラブルや税負担を避けるためにも、早い段階から計画を立て、専門家の助言を得ながら進めることが、家族と会社双方にとって最善の結果につながります。

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代表弁護士

西村 雄大

弁護士の西村 雄大と申します。これまで「弁護士」という職業は、一般的にどこか取っ付き難い職業として認知されていたのではないかと思います。
今はインターネットなどを通じて、ある程度の知識は誰でも取得できるようになりました。法律に関しても同じです。
このような時代だからこそ、弁護士に頼んでよかったと思っていただけるよう、プラスアルファの情報・一つ上のサービスを心掛けて対応します。

法人破産申立て実践マニュアル〔第2版〕

弊所代表弁護士の西村雄大が「法人破産」に関する書籍に著書(共著)として参加し出版しております。

経 歴

2010
京都大学 卒業
2012
神戸大学法科大学院 卒業
2012
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2013
弁護士 登録
2014
中小企業診断士 登録
2014
梅田法律事務所 設立
2015
経営革新等支援機関 認定
2017
梅田パートナーズ法律事務所 改称

資格・登録等

所属団体

著書および論文名

  • ・著書(共著):法人破産申立て実践マニュアル(野村剛司 編著/青林書院)
  • ・法学セミナー平成26年10月号「倒産法の魅力と倒産法の学修」
  • ・物流業界の未来を創る雑誌「物流新時代」にて「西村弁護士の法律相談室」を連載

テレビ出演

・2025年 日本テレビ様のnews zeroにて脱毛サロン“ミュゼ”「解散を決定」」についてリモート出演しました。

・2025年 日本テレビ様のnews zeroにて脱毛サロン“ミュゼ”休業「給料未払い」」についてリモート出演しました。

提供元:日テレNEWS NNN

・2025年 関西テレビ様の「newsランナー」にて、ミュゼプラチナム従業員が破産申し立て」についてコメント出演しました。

・2024年 関西テレビ様の「ドっとコネクト」にて、「アリシアクリニックの破産」についてリモート出演しました。

・2024年 日本テレビ様の「news zero」にて、「アリシアクリニックの破産 利用者への返金」についてコメント出演しました。

・2024年 MBS 毎日放送様の「よんチャンTV」にて、「船井電機 突然の破産」についてコメント出演しました。

・2022年 MBS 毎日放送様の「よんチャンTV」にて、「スーパーマーケット ツジトミの倒産」についてコメント出演しました。

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