会社再建で利用できる特定調停手続きとは?概要から流れまで解説

2020.8.5

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会社再建では、特定調停がほとんど利用されていませんでしたが、新しい運用方法が開始されたことで利用しやすくなりました。会社再建後の経営に良い影響を与えられる可能性があります。

ここでは、会社再建で利用できる特定調停手続きについて、概要から利用の流れまで詳しくご紹介します。

特定調停手続きとは

特定調停手続きとは、会社の債務の減額や免除などについて、調停委員会が当事者の利害関係を調整する手続きです。調停委員を交えて話し合うため、当事者だけで話し合うよりも話がまとまりやすいでしょう。

特定調停手続きのメリット

特定調停手続きには、次のメリットがあります。

費用が比較的安い

特定調停手続きは、民事再生手続きと比べて費用が安いことがメリットです。債務の減額や免除を受けて事業を再建したいが、手続き費用が高くて民事再生を利用できない場合には、特定調停手続きを検討しましょう。

取引先を巻き込まない

特定調停手続きでは、金融機関だけを相手取り、一般の取引先を巻き込みません。取引先まで巻き込むと、会社の信用が大きく低下することで事業再建に必要な取引ができなくなる可能性があります。そのため、できるだけ取引先を巻き込まない方法を選ぶことが大切です。

特定調停による解決が難しいケース

特定調停手続きは、全てのケースに利用できるわけではありません。特定調停による解決が難しいケースについて、詳しくみていきましょう。

再建計画に断固反対された

特定調停では、取引金融機関に会社の再建計画を見せて、借金の減額や弁済などへの同意を求める必要があります。メインバンクの金融機関が再建計画の内容に断固反対するケースでは、他の金融機関が賛成していても特定調停による解決はできないでしょう。

多額の税金や社会保険料を滞納している

特定調停の対象となるのは、借入金やリース債務などです。税金や社会保険料は対象外のため、多額の滞納をしている場合は特定調停を実施しても会社の再建は難しいでしょう。税金や社会保険料には、滞納による遅延損害金がつきます。滞納から時間が経過するほどに滞納額が増えるため、できるだけ早く特定調停を実施することが大切です。

すでに、特定調停では解決が難しい場合は、破産手続きなど他の方法を選ぶしかありません。

役員の責任追及や否認権行使が必要

役員の責任追及や否認権行使が必要な場合、特定調停による処理は不可能です。特定調停には、役員の責任追及や否認権行使に関する手続きがありません。この場合は、民事再生手続きを検討しましょう。

新しい特定調停の運用方法

新しい特定調停の運用では、事前に会社側で事業や財務におけるデューデリジェンスを行います。デューデリジェンスとは、対象となる項目における価値やリスクを調べることです。デューデリジェンスの内容に基づき、調停を申し立てる前に金融機関と協議を行います。

特定調停の申し立て前に金融機関と十分な調整を行うことで、裁判所で実施する調停の回数が1~2回で済むでしょう。

信用保証協会が債権者の代わりに金融機関に弁済した場合に、信用保証協会が債務者に対して弁済額を請求できる権利を求償権といいます。従来では、信用保証協会は求償権を放棄できませんでしたが、条件を満たすことで放棄できるようになりました。

特定調停手続きを行うときの税務処理

特定調停手続きを行った場合の税務処理について、下記の2つを確認しておきましょう。

・金融機関は債権放棄額の損金処理が可能
・債務者は期限切れ繰越欠損金の損金算入によって債務免除益への充当が可能

特定調停手続きの具体的な流れ

それでは、特定調停手続きの流れについて詳しくみていきましょう。

(1)弁護士に相談する
まずは、信頼できる弁護士に相談してください。特定調停手続きには、債務の把握や事業再建計画の策定などが必要です。専門家のサポートを受けて、確実に進めていきましょう。

(2)金融機関に説明する
金融機関に会社の状況と事業再建の方針を伝えます。取引先など他の債権者に特定調停手続きを進める旨を伝える必要はありません。

(3)経営改善計画を策定する
税理士や公認会計士と連携して、経営改善計画を策定します。

(4).金融機関と話し合う
合意を求める内容をまとめた調停条項案と経営改善計画を金融機関に説明して了承を得ます。

(5).特定調停を申し立てる
裁判所に特定調停を申し立てます。

(6)特定調停の成立
裁判所が指定する日に金融機関と債務者が集まり、調停条項案と経営改善計画の内容で調停を成立させます。

まとめ

会社再建で特定調停手続きを行うことで、取引先を巻き込まず、比較的安い費用で債務を整理できます。再建をスムーズに進めるためにも、特定調停手続きを前向きに検討しましょう。「梅田パートナーズ法律事務所」では、最良の選択になるように、親身に寄り添って会社の再建をサポートしております。まずはお気軽にご相談ください。

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この記事を監修した弁護士

弁護士 西村 雄大
梅田パートナーズ法律事務所

大阪弁護士会【登録番号 49195】

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代表弁護士

西村 雄大

弁護士の西村 雄大と申します。これまで「弁護士」という職業は、一般的にどこか取っ付き難い職業として認知されていたのではないかと思います。
今はインターネットなどを通じて、ある程度の知識は誰でも取得できるようになりました。法律に関しても同じです。
このような時代だからこそ、弁護士に頼んでよかったと思っていただけるよう、プラスアルファの情報・一つ上のサービスを心掛けて対応します。

法人破産申立て実践マニュアル〔第2版〕

弊所代表弁護士の西村雄大が「法人破産」に関する書籍に著書(共著)として参加し出版しております。

経 歴

2010
京都大学 卒業
2012
神戸大学法科大学院 卒業
2012
司法研修所
2013
弁護士 登録
2014
中小企業診断士 登録
2014
梅田法律事務所 設立
2015
経営革新等支援機関 認定
2017
梅田パートナーズ法律事務所 改称

資格・登録等

所属団体

テレビ出演

・2024年 MBS 毎日放送様の「よんチャンTV」にて、「船井電機 突然の破産」についてコメント出演しました。

・2022年 MBS 毎日放送様の「よんチャンTV」にて、「スーパーマーケット ツジトミの倒産」についてコメント出演しました。

著書および論文名

  • ・著書(共著):法人破産申立て実践マニュアル(野村剛司 編著/青林書院)
  • ・法学セミナー平成26年10月号「倒産法の魅力と倒産法の学修」
  • ・物流業界の未来を創る雑誌「物流新時代」にて「西村弁護士の法律相談室」を連載

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