同性パートナーの養子縁組と相続|知っておきたい効果と注意点
同性パートナーが相続を目的に養子縁組を結ぶケースは少なくありません。
また、法律上の家族になるために同性パートナーが養子縁組を組む場合もあります。この制度の利用を検討する際は、効力について十分に理解しておくことが大切です。
今回は、同性パートナーの養子縁組と相続をテーマに、その効力や注意点について詳しく解説します。
養子縁組とは
養子縁組とは、血縁関係がない人物同士が法律上の親子関係になるための制度のことです。
従来は、子どもがいない家庭において跡取りを設けたり家系を存続させたりすることを目的に行われていました。
養子縁組には次の種類があります。
- 普通養子縁組……実親と養親の2組との親子関係にある
- 特別養子縁組……実親との親子関係を断ち、養親とのみ親子関係にある状態
同性パートナーも養子縁組は可能
日本では、同性パートナーが結婚することが認められていません。そこで用いられてきたのが養子縁組です。
養子縁組で同性パートナーが法律上の親子になることで、精神的な安心を得たりさまざまな制度を利用したりできるようになります。
養子縁組はいずれかが成人であれば行うことができますが、年下が養子となる点に注意が必要です。
同じ年の場合は、1日でも早く生まれた方が年上の扱いとなります。
養子縁組の手続き
養子縁組の手続きは、必要書類を揃えて役所窓口で届け出をするだけで完了します。ただし、成人2人の証人が必要なため、あらかじめ探しておきましょう。
また、未成年者を養子にするには、家庭裁判所の許可が必要です。
なお、養子縁組は自由に解消できますが、双方の同意を得られない場合は離婚のように家庭裁判所に申し立てて調停を行うことも可能です。
養子縁組の効果
養子縁組によって正式に親子関係が結ばれると、親が子を扶養する権利、子が親の扶養を受ける権利が発生します。
また、養子縁組によって法定相続人になるため、養親の財産を相続できる可能性が生じるのです。
養子縁組の効果について詳しくみていきましょう。
相続税を節税できる
養子縁組した場合、一方が亡くなったときに法定相続が発生します。親族への相続では税制上の多くのメリットを得ることができます。
不動産の所有権の変更登記においても、税額は不動産価額の1,000分の4、遺言による遺贈では1,000分の20と多額の節税が可能です。
【関連コラム:養子縁組でも相続は可能!相続税の節税効果や注意点も解説】
遺族年金を受給できる
養子になると遺族年金を受給できます。法律上の婚姻関係になれない同性パートナーは、亡くなったときにもう一方が遺族年金を受給できません。場合によっては生活に困窮する可能性があるでしょう。
養子縁組によって遺族年金を受給できれば、生活が困窮するリスクを抑えることができます。
【関連コラム:遺族年金とは?受給資格から支給額・手続きまで解説】
家族関連のサービスを利用できる
家族を対象とする一般サービスは多々あります。
例えば、携帯電話の家族割は、家族が同社の携帯電話を持っていれば料金が安くなるサービスです。
また、住宅ローンを組むときに共同ローンを選択できる可能性も高まります。
そのほか、同性パートナーが敬遠されがちな民間賃貸住宅の契約もスムーズに締結できるようになるでしょう。
入院時の面会がしやすい
入院時は、家族のみ面会できるケースがあります。たとえパートナーでも面会は拒否されることがありますが、養子縁組で家族となれば優先的に面会が可能になります。
同性パートナーの養子縁組の注意点
養子縁組後は、養子は養親の氏に変更が必要です。運転免許証や健康保険証、銀行口座、パスポートなど、さまざまな名義を変更することになります。
また、養子縁組に親族の理解を得ないまま強行すると、相続が発生した際に親族とトラブルになる可能性が高まります。理解を得ていない状態では、他人が家族に入り込んだとみなされ、嫌悪感を示すケースも少なくありません。
そして、同性パートナーが最も注意したいのが、一度養子縁組をした者は婚姻できないことです。いずれ日本に同性婚の制度ができた場合、養子縁組をしたことが原因で結婚が難しくなる可能性があります。ただ、このようなケースを見越して例外を認める条文を組み込む可能性も否定できません。
養子縁組を検討しているのであれば、将来のことも考慮して決断することが大切です。
まとめ
同性パートナーが結婚できる制度は日本にはありませんが、養子縁組によって家族になることは可能です。
ただし、同性婚が認められるようになったときに養子縁組をした過去がリスクになる可能性も否定できません。専門家にも相談したうえで、養子縁組をすべきかどうか検討しましょう。
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