相続廃除とは?条件や行うケースから手続きの方法まで解説
相続人は法律で定められており、遺言書がなければ相続人が遺産分割協議を行ったうえで相続の割合や分配方法などを決めます。このとき、一切の財産を相続させたくない人物がいる場合は、あらかじめ相続廃除を行っておく必要があります。裁判所に認められた場合は、その人物に一切の財産を相続させないようにできます。
今回は、相続廃除とはどのような制度なのか、認められる条件や手続きの方法などについて詳しく解説します。
相続廃除とは
相続廃除は、相続権を持つ人物を相続の対象から外す制度です。相続権を失った人物は、遺言書で指定されない限りは、財産を相続できません。遺言書に財産を相続させたくない旨を記載する方法もありますが、遺留分(最低限取得できる相続財産の割合)を請求されると一定割合の財産を相続させざるを得なくなります。相続廃除を行うことで遺留分も請求できなくなるため、一切の財産を渡さずに済みます。
相続廃除は相続欠格とは別物
相続権が失れるものとしては、相続廃除のほかにも相続欠格があります。これは、推定相続人が遺言書を隠したり被相続人を殺害したりしたことで罪に問われるなどしたときに、相続権を失うものです。
一方、相続廃除は被相続人の意思で相続権を失わせるものです。
相続廃除を行えるのはどういうとき?
相続廃除は、被相続人に対して次のような行為を行った人物が対象です。
- 虐待した(常習的に暴力をふるった、介護のときに食事や排泄を放棄したり嫌がらせとも取れる行為をした)
- 重大な侮辱を与えた(早く死ね、火事で死ねばいいなどといった言動を常習的に行った)
- 他の著しい非行がみられた(窃盗や暴行などで何度も服役をしている)
なお、上記の例はあくまでも一例であり、さまざまな要素を踏まえて家庭裁判所が判断します。
焦点としては、被相続人との家族関係を修復不可能なほどに壊したかどうかです。問題となる言動や行動が起きた原因、責任の所在、言動や行動を繰り返しているかどうかなども考慮されます。
相続廃除は、相続人は財産を一切相続できなくなり、今後の人生にも影響が及びかねません。影響が大きいだけ、認められるには相応の条件を満たしていなければならないのです。
「日常的に暴力をふるわれていた」、「窃盗や暴力を重ねて全く反省せず、繰り返し服役している」といった場合は、本人の希望に関係なく相続廃除できると考えられます。ただし、自己判断はできないため、「これだけのことをしたのだから認められて当然だろう」と思い込まず、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
相続廃除は認められにくい?
被相続人が「気分を害された」「イライラしているときにちょっとした文句を言われた」といった行為・言動に限る場合には、廃除となる理由としては認められないでしょう。つまり、合理的な理由なく特定の人物の相続権を奪うことはできません。相続廃除を行うには、それだけ大きな理由が必要なため、認められるケースが少ないといわれています。
ただし、条件を満たしていれば認められる可能性が高いため、認められるケースが少ないというのは、条件を十分に理解しないまま申請したことが原因と考えられます。
相続廃除した場合は子供や孫へ相続権が引き継がれる
廃除された推定相続人に子供や孫がいた場合、相続権が引き継がれます。これを「代襲相続」といい、通常は相続人が死亡した場合に行われるものです。相続廃除すると相続人が死亡した場合と同じく、その子供や孫に相続権が引き継がれます。
廃除した人物の子供や孫も虐待や侮辱に関わっているようなケースでは、子供や孫にも相続させたくないと思うこともあるでしょう。この場合は、遺言書に「相続廃除した人物の子供や孫に財産は一切相続させない」などと記載するなどの対応が必要です。このような複雑な事例については遺産相続に詳しい弁護士に相談し、対応方法のアドバイスを受けることをおすすめします。
相続廃除の手続きの方法
相続廃除は、正しい手順で手続きを行わなければなりません。また、必要書類に不備があったり不足していたりする場合は、申請を受理してもらえないことに注意が必要です。また、手続きには生前廃除と遺言廃除があります。それぞれの方法を詳しく見ていきましょう。
生前廃除
生前廃除は、被相続人が存命中に推定相続人の相続権を廃除する手続きのことです。「推定相続人廃除の審判申立書」を被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。
その際は、800円分の収入印紙と書類を郵送するのにかかる費用の数千円程度と一緒に、次の書類も提出します。
- 相続廃除申立書
- 被相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 廃除したい推定相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)
審判の確定後は家庭裁判所から審判書謄本と確定証明書が送られてきます。これらの書類を10日以内に被相続人の戸籍がある役所窓口に次の書類と一緒に提出します。
- 審判の確定証明書
- 家庭裁判所による審判書の謄本
- 推定相続人廃除届
遺言廃除
遺言廃除は、遺言書に誰を相続廃除したいのかを記載して、遺言執行者に手続きを任せる方法です。この方法を取る場合は、遺言廃除したい旨をあらかじめ遺言執行者に伝えておくことが重要です。
遺言書に記載する内容は次のとおりです。
- 遺言執行者の名前
- 相続廃除する推定相続人の名前
- 相続廃除したい理由
遺言書の記載方法の例を紹介します。
遺言者○○は、次のとおり遺言する
1 遺言者○○の長男○○は、介護の際に「早く死ねばいいのに」「二度と帰ってくるな」などと侮辱したほか、日常的に暴行を加えられた。さらに、兄弟からお金を借りたまま返すことなく逃げ、勘当することになった。これらの言動・行動を行った長男○○を遺言者の推定相続人から廃除する。
2 この遺言の遺言執行者を○○○○(○○県○○市○○町○丁目○番○号)に指定する。
令和○年○月○日
○○県○○市○○町○丁目○番地
遺言者 ○○○○ 印
まずは、「推定相続人廃除の審判申立書」を受け取ります。受け取るのは遺言執行者ではなくても問題ありませんが、記入するのは遺言執行者本人に限ります。そして、生前廃除と同じ必要書類、遺言書の写しか遺言書の検認調書謄本の写し、推定相続人廃除の審判申立書を提出しましょう。
なお、遺言執行者が家庭裁判所に選出された場合には執行者選任の審判書謄本も必要です。その後、家庭裁判所から送られてきた書類を役所窓口に提出する流れや必要書類などは生前廃除と同じです。
相続廃除については弁護士に相談するのがおすすめ
相続廃除については、弁護士に相談することがおすすめです。法的な手続きや専門知識が必要となるため、専門家の助言やサポートを受けなければスムーズに進めることができません。
弁護士は法律の専門家であり、相続廃除に関する知識や経験を持っています。また、弁護士は文書作成や手続きの代行も行えるため、忙しくて手続きする時間がない、書類のミスで何度も裁判所や役所窓口に行くことは避けたいといったことに悩む必要もありません。
まとめ
相続廃除は、何があっても相続させたくない相続人に対して行うものであり、認められるためには相当な理由が必要です。まずは、信頼できる弁護士に相談し、相続廃除が可能かどうか確認しましょう。梅田パートナーズ法律事務所は遺産相続に強い弁護士がトータル的にサポートしておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
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特に財産に会社株式のあるケースや経営権が絡む相続問題を得意としており、税金対策や経営についても多角的な視点を持って、何が一番いいのかを考え、相続計画と遺言書をつくる必要があります。
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経 歴
2010 | 京都大学 卒業 |
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2012 | 神戸大学法科大学院 卒業 |
2012 | 司法研修所 |
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2014 | 中小企業診断士 登録 |
2014 | 梅田法律事務所 設立 |
2015 | 経営革新等支援機関 認定 |
2016 | 梅田パートナーズ法律事務所 改称 |
事務所概要
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著書および論文名 | ・著書(共著):法人破産申立て実践マニュアル(野村剛司 編著/青林書院) ・法学セミナー平成26年10月号「倒産法の魅力と倒産法の学修」 ・物流業界の未来を創る雑誌「物流新時代」にて「西村弁護士の法律相談室」を連載 |
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