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父の遺産をすべて母が相続するのはあり?デメリットや防ぐ方法を解説

2024.8.19

この記事を監修した弁護士

弁護士 西村 雄大
梅田パートナーズ法律事務所

大阪弁護士会【登録番号 49195】

父の遺産をすべて母が相続することが子どもたちにとってどのような影響を及ぼすのか、そしてそれが合法的に可能なのかが気になるところでしょう。本記事では、父の遺産を母がすべて相続できるケースと、その際に生じる可能性のあるデメリット、母による独占を防ぐための方法について詳しく解説します。

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父の遺産をすべて母が相続できるケース

遺産相続の割合は法律で定められており、基本的には母がすべての遺産を相続することは難しいとされています。しかし、いくつかの条件を満たすことで、母が全額を相続することが可能となるケースも存在します。

まず、遺産相続における法定相続分について知っておくことが重要です。法定相続分とは、相続人が法的に受け取るべき遺産の割合を指します。たとえば、父が亡くなった場合、母と子どもが相続人となる場合、母の法定相続分は2分の1、残りの2分の1を子どもたちで分けることになります。子どもが複数いる場合は、この2分の1を均等に分配します。

しかし、以下のようなケースでは、母が父の遺産をすべて相続することが可能です。

遺言書で指定された

父が遺言書を残しており、その中で「すべての遺産を妻に相続させる」と明記されていれば、遺言書の内容が優先されます。この場合、母が遺産の全額を相続することが可能です。ただし、他の相続人(子ども)が遺留分を主張することができるため、その点に留意する必要があります。

遺産分割協議で合意した

遺言書がない場合でも、相続人全員が母にすべての遺産を相続させることに同意した場合、遺産分割協議書を作成し、全員が署名・押印することで、母が全額を相続することが可能です。

母が全額を相続することの子にとってのデメリット

母がすべての遺産を相続することは、一見すると家族の和を保つために良い方法のように思えるかもしれません。しかし、これにはいくつかのデメリットが存在します。

税金が高くなる場合がある

父の遺産を母がすべて相続した場合、その後の二次相続で相続税の負担が大きくなる可能性があります。二次相続とは、母が亡くなったときに発生する相続のことを指します。この場合、一次相続で母が受け取った遺産に加えて、母自身の財産も相続対象となるため、相続税が非常に高額になることがあります。

一次相続であれば、配偶者控除が適用され、相続税が軽減されることがありますが、二次相続ではこの控除が適用されません。また、相続税の基礎控除額も減少するため、結果的に子どもたちが負担する相続税が増えるリスクがあります。

トラブルになることがある

母がすべての遺産を相続することに子どもたちが納得していない場合、相続争いに発展する可能性があります。特に、遺産分割の際に不公平感を抱いた子どもが遺留分侵害額請求を行うことで、家族間の関係が悪化することがあります。

また、母がすべての遺産を相続した後に、遺産の管理や処分方法について意見が対立することも考えられます。このようなトラブルを避けるためには、遺産分割に際して事前に十分な話し合いを行うことが重要です。

母が全額を相続するのを防ぐ方法

子どもたちが母による遺産の独占を防ぎたい場合、いくつかの法的手段があります。以下に、その代表的な方法を紹介します。

遺言無効確認訴訟を起こす

父が遺言書を残し、その中で母にすべての遺産を相続させると記載されていた場合でも、遺言書が無効であると判断されることがあります。たとえば、遺言書が法的に不備がある場合や、父が遺言書を作成した時点で判断能力が不十分だった場合、子どもたちは遺言無効確認訴訟を起こすことができます。

遺言無効が認められた場合、遺産分割は遺産分割協議の合意内容に基づいて行うため、子どもたちも法定相続分を受け取れるようになる可能性があります。

預貯金口座を凍結する

父の遺産の中に預貯金が含まれている場合、母がこれを独占することを防ぐために、預貯金口座を凍結する方法があります。父が亡くなったことを金融機関に知らせると、遺産分割が完了するまでの間、口座が凍結されます。これにより、母が勝手に預貯金を引き出すことができなくなり、遺産分割協議が公平に行われる環境が整います。

遺留分侵害額請求をする

遺留分とは、法定相続人が最低限確保されるべき遺産の割合を指します。父が遺言書で母にすべての遺産を相続させると指定していた場合でも、子どもたちは遺留分を侵害されたとして、遺留分侵害額請求を行うことができます。

母は遺留分を侵害した部分について、相当する金額を子どもたちに支払う義務を負うことになります。遺留分侵害額請求は、相続開始から1年以内に行う必要があるため、早急に対応することが重要です。

不当利得返還請求をする

母が父の遺産を不当に取得している場合、子どもたちは不当利得返還請求を行うことができます。不当利得返還請求は、母が法律的な根拠なく利益を得ている場合に、その利益を返還させるための手続きです。たとえば、母が遺言書を偽造して遺産を独占した場合などに、この手続きを利用することができます。

まとめ

父の遺産を母がすべて相続することは、法律上可能なケースもありますが、子どもたちにとっては税金負担が増えたり、トラブルが発生したりするデメリットがあります。母による遺産の独占を防ぐためには、遺言無効確認訴訟や預貯金口座の凍結、遺留分侵害額請求、不当利得返還請求などの法的手段を適切に利用することが重要です。相続問題は家族間の大きなトラブルに発展する可能性があるため、早めに専門家に相談し、円満な解決を目指しましょう。

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西村 雄大Takahiro Nishimura

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特に財産に会社株式のあるケースや経営権が絡む相続問題を得意としており、税金対策や経営についても多角的な視点を持って、何が一番いいのかを考え、相続計画と遺言書をつくる必要があります。

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経 歴

2010京都大学 卒業
2012神戸大学法科大学院 卒業
2012司法研修所
2013弁護士 登録
2014中小企業診断士 登録
2014梅田法律事務所 設立
2015経営革新等支援機関 認定
2016梅田パートナーズ法律事務所 改称

事務所概要

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著書および論文名・著書(共著):法人破産申立て実践マニュアル(野村剛司 編著/青林書院)
・法学セミナー平成26年10月号「倒産法の魅力と倒産法の学修」
・物流業界の未来を創る雑誌「物流新時代」にて「西村弁護士の法律相談室」を連載

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