投資信託の相続はどうする?手続き方法や注意点を解説

2024.8.14

この記事を監修した弁護士

弁護士 西村 雄大
梅田パートナーズ法律事務所

大阪弁護士会【登録番号 49195】

金融商品の多様化に伴い、投資信託が遺産として相続対象となるケースが増えています。しかし、投資信託は株式や預貯金に比べて相続手続きが複雑であり、遺産分割の際には特別な注意が必要です。本記事では、投資信託の相続方法、手続きの流れ、注意すべきポイントについて詳しく解説します。

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投資信託の相続方法

投資信託の相続において、まず確認すべきは遺言書の有無です。遺言書の内容によっては、相続手続きが大きく異なることがあります。投資信託の相続方法について詳しく見ていきましょう。

遺言書の有無が関係する

遺言書が存在する場合、その内容に従って投資信託の分割を行います。たとえば、被相続人が「特定の投資信託を長男に相続させる」と明記していれば、長男がその投資信託を単独で相続します。ただし、遺言書に記載された内容が遺留分を侵害している場合、他の相続人が遺留分侵害額請求を行う可能性があります。この場合、遺言書の内容に従った相続に加えて、遺留分を補填するための調整が必要となります。

一方、遺言書がない場合には、相続人全員で遺産分割協議を行い、投資信託の取り扱いを決定します。

遺産分割協議での取り扱い

遺言書がない場合、相続人全員による遺産分割協議が必要です。協議では、投資信託をどのように分割するかが議論されます。たとえば、相続人の1人が特定の投資信託を相続することに同意が得られた場合、その内容を遺産分割協議書に明記し、全員が署名・押印することで相続手続きが進行します。

しかし、投資信託の価額は変動するため、協議時と実際の相続時で価値が異なることがあります。このため、遺産分割協議の際には、価値の変動を考慮に入れた柔軟な対応が求められます。

調停・審判での取り扱い

遺産分割協議で合意に至らない場合、家庭裁判所で調停や審判が行われます。調停では、第三者である調停委員が仲介し、相続人間の合意形成を目指します。調停が成立しなかった場合は、審判手続きに移行し、最終的には裁判官が相続方法を決定します。

調停や審判は時間がかかるため、早期に合意に達することが望ましいですが、どうしても意見が一致しない場合には、これらの法的手続きを利用することになります。

投資信託の相続時の手続き方法

投資信託の相続手続きは、まず金融機関に対して相続が発生したことを通知することから始まります。被相続人が取引していた金融機関に連絡し、口座をロックしてもらうことで、不正な引き出しを防ぐことができます。

続いて、金融機関から必要書類が送られてくるので、これをもとに相続手続きを進めます。一般的に必要となる書類には、被相続人の戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本や印鑑登録証明書、遺産分割協議書などがあります。

投資信託を現金化して分配する場合には、金融機関で解約手続きを行い、相続割合に応じて分配金を受け取ります。一方、特定の相続人が投資信託をそのまま引き継ぐ場合、その相続人が新たに口座を開設し、投資信託を移管する形で相続が完了します。

投資信託の相続の注意点

投資信託の相続にはいくつかの注意点があります。これらを理解しておくことで、相続手続きがスムーズに進むだけでなく、後々のトラブルを防ぐことができます。

価値の変動に注意する

投資信託の価額は市場の動向によって日々変動します。そのため、遺産分割協議時点と実際の解約時点で価値が大きく異なる可能性があります。たとえば、協議時には1,000万円の価値があった投資信託が、解約時には500万円に減少していたり、逆に1,500万円に増加していたりすることがあります。このような価値の変動を考慮し、分割方法を慎重に決定することが重要です。

税金の問題を考慮する

投資信託の相続においては、税金にも注意が必要です。相続税は、相続開始時の時価を基準に評価されますが、投資信託の価値が相続後に大きく変動した場合、その差額に対して譲渡所得税が発生することがあります。特に、相続後に解約を行った際に利益が出た場合、その利益に対して20.315%の税金が課されます。

また、投資信託を相続し、代償分割を行う場合、その内容が遺産分割協議書に明記されていないと贈与税が課される可能性があるため、注意が必要です。

手続きの遅延を避ける

投資信託の相続手続きは複雑であり、金融機関とのやり取りに時間がかかることがあります。手続きが遅れると、投資信託の価値が変動し、相続人間での合意が難しくなることがあります。そのため、早めに必要な書類を揃え、スムーズに手続きを進めることが求められます。

まとめ

投資信託の相続は、他の金融商品に比べて複雑で、手続きにも時間がかかることがあります。しかし、遺言書の有無、遺産分割協議、調停・審判などの手順を理解し、適切な手続きを行うことで、スムーズに相続を進めることができます。投資信託の相続に際しては、専門家の助言を受けながら、慎重に手続きを進めることが重要です。

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特に財産に会社株式のあるケースや経営権が絡む相続問題を得意としており、税金対策や経営についても多角的な視点を持って、何が一番いいのかを考え、相続計画と遺言書をつくる必要があります。

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経 歴

2010京都大学 卒業
2012神戸大学法科大学院 卒業
2012司法研修所
2013弁護士 登録
2014中小企業診断士 登録
2014梅田法律事務所 設立
2015経営革新等支援機関 認定
2016梅田パートナーズ法律事務所 改称

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著書および論文名・著書(共著):法人破産申立て実践マニュアル(野村剛司 編著/青林書院)
・法学セミナー平成26年10月号「倒産法の魅力と倒産法の学修」
・物流業界の未来を創る雑誌「物流新時代」にて「西村弁護士の法律相談室」を連載

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