交通事故による死亡の場合は保険金や慰謝料の相続はどうなる?

2023.7.31

この記事を監修した弁護士

弁護士 西村 雄大
梅田パートナーズ法律事務所

大阪弁護士会【登録番号 49195】

被相続人の死因が交通事故の場合、保険金や慰謝料などが発生することがあります。これらは相続財産に含まれるのか、それとも個々の財産として扱われるのか気になる方が多いのではないでしょうか。今回は、交通事故による死亡の場合の保険金や慰謝料の相続について詳しく解説します。

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保険金は相続財産に含まれない

保険金は、保険契約に基づいて保険事故が生じた際に保険会社から支払われる金銭のことです。損害保険と生命保険の2種類があり、損害保険は物や財産に損害が生じた際に、生命保険は病気や怪我、死亡した際に保険金が支払われます。

険金の受取人が本人以外であれば、その受取人が自身の財産として受け取ることができます。

受取人が「被保険者の相続人」と指定されている場合も、保険金は相続財産に含まれないとの認識が一般的です。ただし、保険金の扱いについては一概に言えない面があるため、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

保険金は特別受益にならないことがほとんど

特別受益とは、亡くなった方から生前に贈与を受けたり、相続開始後に遺贈を受けたりした場合に、法定相続分どおりに相続すると他の相続人に不公平になる可能性があるため、その利益を考慮して相続分を計算する仕組みのことです。

交通事故による死亡を理由とした保険金を受け取った場合は、通常のケースでは特別受益とはみなされません。

ただし、他の相続人との間で著しい不公平が生じるような場合は、例外的に特別受益とみなされる可能性があります。

慰謝料は相続財産に含まれない

慰謝料は、違法行為によって精神的苦痛を被った際に、相手方に請求できる金銭のことです。交通事故やその他の違法行為による被害を受けた場合に、加害者に対して慰謝料を求めることができます。

亡くなった本人だけでなく、その遺族も精神的な苦痛が生じる可能性があります。そのため、死亡事故の場合、被害者本人と遺族の双方が慰謝料を請求する権利が発生します。

慰謝料は相続財産に含まれません。受け取った遺族の所得として扱われます。ただし、相続税はもちろん所得税もかからない仕組みになっています。

なお、被相続人が生存中に別案件で慰謝料を受け取ることが決まっており、受け取る前に死亡してしまった場合には、その慰謝料を受け取る権利が相続財産に含まれます。

慰謝料の相場

慰謝料は、事故の状況や被害者の家庭内の立場によって相場金額が異なります。例えば、被害者が一家の主な収入を得ていた場合には3,000万円程度、配偶者の場合は2,500万円程度、子供や高齢者、独身者では2,000万~2,500万円などです。ただし、慰謝料額は事故の悪質性や亡くなった方が将来得たと考えられる金額などさまざまな要素を踏まえて決まるため、一概には言えません。

家族が請求する慰謝料については、被害者本人の慰謝料の1~3割ほどになるケースが多いとされています。

慰謝料は誰に相続される?

慰謝料は、被害者本人が亡くなった場合は相続人に相続されます。相続人は、配偶者がいる場合には配偶者が優先して相続し、その後に子や直系尊属、兄弟姉妹が続きます。例えば、配偶者と子1人の場合は1/2ずつ相続し、親や祖父母、兄弟姉妹などは一切相続できません。また、相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合は、配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4と、なるべく多く配偶者が受け取れる仕組みになっています。

これは、生計において影響が大きいのが配偶者であるためです。兄弟姉妹は慰謝料を相続できなかったとしても生活に大きな影響はないため、このような配分となっています。

慰謝料の受け取りでトラブルになることがある

慰謝料は、法定相続分に従って分配されるものですが、相続人同士でトラブルになることが少なくありません。例えば、精神的苦痛が大きかった配偶者が多く受け取るべき、未来のために子が多く受け取るべきなど、異なる主張をする可能性があります。

慰謝料は遺産分割協議を経ずに相続されることから、一部の相続人が保険会社と個別に示談できます。しかし、後からトラブルになる恐れがあることから、そのような形での示談交渉を避ける保険会社もあります。このような問題が起きそうなときは、早めに弁護士に相談しましょう。

まとめ

交通事故による死亡の場合、保険金と慰謝料はいずれも相続財産に含まれません。そのため、相続税が課税されて、実際の受取額が減る心配もないのです。ただ、相続人同士で誰が慰謝料をどれだけ受け取るかトラブルになることがあるため、早めに弁護士に相談しておくことをおすすめします。

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特に財産に会社株式のあるケースや経営権が絡む相続問題を得意としており、税金対策や経営についても多角的な視点を持って、何が一番いいのかを考え、相続計画と遺言書をつくる必要があります。

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経 歴

2010京都大学 卒業
2012神戸大学法科大学院 卒業
2012司法研修所
2013弁護士 登録
2014中小企業診断士 登録
2014梅田法律事務所 設立
2015経営革新等支援機関 認定
2016梅田パートナーズ法律事務所 改称

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・物流業界の未来を創る雑誌「物流新時代」にて「西村弁護士の法律相談室」を連載

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