特別受益にあたる生前贈与は相続開始から10年以内!注意点について解説
遺産相続の際に生前贈与をしていたことが発覚した場合、特別受益について確認が必要です。特別受益にあたる生前贈与は、相続開始から10年以内と定められています。本記事では、特別受益にあたる生前贈与の期限や注意点などについて詳しく解説します。
特別受益にあたる生前贈与は相続開始から10年以内に限る
特別受益にあたる生前贈与は、相続開始前10年以内に行われたものに限定されることが、令和元年の相続法改正によって定められました。これは、相続人間の公平性を保ち、遺留分の侵害を防ぐための措置です。ただし、対象は遺留分計算の場合に限り、相続分の計算に関しては期間制限がなく、過去にさかのぼって生前贈与が特別受益の対象となります。
そもそも特別受益とは
特別受益とは、相続人の中の一部が被相続人から生前贈与によって受け取った利益のことを指します。これは、遺産分割において公平性を保つために考慮されるべきものです。特別受益の主な目的は、相続人間での不公平を防ぎ、公平な遺産分割を実現することです。
例えば、Aさんが亡くなり、その相続人が子どもBとCの2人だったとします。Bが生前にAさんから大きな贈与を受けていた場合、そのまま遺産をBとCで半分ずつ分けるのは不公平です。そこで、Bが受け取った贈与額を考慮して遺産分割を行うことで、公平性を保つことができます。
これを特別受益の持ち戻しといいます。
特別受益の対象となるもの・ならないもの
特別受益の対象となるのは、次のようなものです。
特別受益の対象
具体例
説明
婚姻のための贈与
持参金、支度金
結婚の際に親から贈与された金銭や財産
生計の資本としての贈与
住宅購入資金、事業資金、教育資金
生活の基盤となる高額な援助
不動産の贈与
家、土地
親が所有する土地や建物を贈与した場合
車の贈与
高価な車
親が子供に贈与した高額な車
次のようなものは特別受益の対象になりません。
特別受益の対象外
具体例
説明
相続人以外への贈与
友人への金銭贈与
相続人ではない友人や知人への贈与
生活費や日常的な支出
生活費、日常的な教育費、小遣い
扶養の一環と見なされるため特別受益には含まれない
生命保険金
保険金
受取人の固有財産として扱われる。ただし高額な場合は例外あり
おしどり贈与
居住用不動産の贈与
婚姻期間が20年以上の配偶者に対する贈与
特別受益の持ち戻しは免除できうる
特別受益の持ち戻し免除とは、被相続人が特定の相続人に対して行った生前贈与や遺贈を、遺産分割の際に考慮しないことを意味します。これにより、特別受益を受けた相続人が他の相続人と公平に遺産を分割することが求められなくなります。
持ち戻しを免除するには、被相続人が明示的もしくは黙示的にその意思を表示する必要があります。
例として、被相続人が遺言書で「長男Bへの生前贈与は持ち戻さない」と記載することで、特別受益の持ち戻しを免除する意思表示を明確にできます。また、黙示の意思表示も認められる場合があるものの、裁判所の判断に委ねられるため、証拠が曖昧だと認められないリスクがあります。
特別受益は遺留分にも関係がある
特別受益は遺留分の計算にも大きな影響を与えるため、注意が必要です。
遺留分とは、法定相続人が最低限保証される遺産の割合のことです。遺留分の制度は、相続人の権利を守るために設けられています。法定相続人には配偶者や子供、場合によっては両親が含まれます。
特別受益がある場合、その特別受益分は遺留分の計算においても考慮されます。具体的には、相続人が生前に受け取った特別受益を相続財産に持ち戻し、その総額から遺留分を計算します。これにより、他の相続人の遺留分が侵害されないように調整が行われます。
例えば、父親が生前に長男に1,000万円を贈与し、残りの遺産が4,000万円であったとします。この場合、遺産総額は5,000万円(4,000万円+1,000万円)として計算されます。遺留分が各相続人に対して平等に保証されるため、特別受益を受けた長男の相続分は、すでに受け取った1,000万円を差し引いた額になります。
前述したとおり、特別受益の持ち戻しに関しては、相続分の計算時には期間の制限はありませんが、遺留分の計算においては相続開始前10年以内の贈与が対象となります。
まとめ
特別受益にあたる生前贈与は、相続開始前の10年以内に行われたものが対象となります。これは、相続人間の公平性を保ち、遺留分の侵害を防ぐための重要な措置です。ただし、相続分の計算における特別受益については、その期間に制限がありません。
特別受益の持ち戻しについては法律が複雑でわかりにくいため、弁護士のサポートを受けることが大切です。梅田パートナーズ法律事務所では、特別受益の持ち戻しを含め、相続についてトータルサポートしております。まずはお気軽にご相談ください。
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2016 | 梅田パートナーズ法律事務所 改称 |
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