【国際相続】外国籍の相続人がいる相続の手続きのルールとは?

2023.10.21

この記事を監修した弁護士

弁護士 西村 雄大
梅田パートナーズ法律事務所

大阪弁護士会【登録番号 49195】

相続人に外国籍の人がいる場合、日本人のみの場合と手続の流れが異なります。また、外貨建ての資産の有無や日本国籍か外国籍かなど、さまざまな条件が相続に関与するため、1つずつ着実に確認していくことが大切です。

この記事では、国際相続をテーマに、流れや注意点などについて詳しく解説します。

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外国籍の相続人が関わる「国際相続」とは

国際相続とは、日本と外国をまたぐ相続のことです。例えば、相続人が外国籍、被相続人が外国籍、いずれかが外国に住んでいる、一部の資産が外国にあるなどのケースがあります。このとき、相続手続をどの国の法律に従うべきか悩むことでしょう。

相続の準拠法には2つの考え方がある

相続の準拠法には次の2つの考え方があり、国によって異なります。

相続統一主義

相続財産の種類にかかわらず、全財産の相続において被相続人の本国または住所地の法律に準拠する考え方です。また、次の2つに分類されます。

  • 本国法主義……被相続人の国籍の国の法律に準拠する(採用国の例:日本、韓国)
  • 住所地法主義……被相続人が最後に住んでいた地域の法律に準拠する(採用国の例:一部のEU加盟国)

相続分割主義

相続分割主義は、不動産に限り、不動産がある住所地の法律に準拠し、それ以外の財産は住所地または被相続人の本国の法律に準拠する考え方です。

採用国の例は、アメリカや中国、イギリスなどです。

国際相続において、どの準拠法を選ぶかは複雑であり、慎重な判断が求められます。各国の法律や国際的な法的取り決めに詳しい弁護士の助言を受けることが重要です。

日本国籍の外国人の場合は日本の法律に準拠する

外国人が日本国籍であれば日本の法律に従うため、特段の対応は必要ありません。日本が採用しているのは本国法主義のため、外国で生まれ育った人であっても今は日本国籍なのであれば、日本の法律に準拠します。

遺言書は現地の法律で有効かどうかがポイント

それでは、遺言書がある場合はどのように対応すればよいのでしょうか。日本では、遺言書を作成した際の遺言者の本国法に準拠します。例えば、日本国籍の外国人が海外の法律に基づいて遺言書を作成し、海外で亡くなった場合には、その方式が守られているのであれば日本においてもその遺言書は有効です。

外国人への相続手続の流れ

外国人の相続人がいる場合、相続手続は次の流れで進めます。

1.必要書類を用意する

外国籍の相続人が日本で相続手続きを行う際には、書類取得や手続きにおいていくつかの異なる点が存在します。

まず、外国籍の相続人は、日本の戸籍謄本を取得できないため、代わりに日本国籍があった際の最後の戸籍謄本(除籍謄本)を提出します。この書類は、日本の最後の本籍地の市区町村役場で入手できます。

さらに、住民票の代替として、在外公館で居住証明書を入手します。在外公館でこれらの書類を取得できない場合、現地の公証人の協力を仰がなければなりません。

2.遺産分割協議を行う

外国籍かどうかにかかわらず、すべての相続人が集まって遺産分割協議を行う必要があります。ただし、必ずしも対面で行うべきとは限りません。海外在住の方、出張で忙しい方なども参加できるように、Web会議ツールを使用して行うのも1つの方法です。

遺産分割協議がまとまらなかった場合は、日本の家庭裁判所に「遺産分割の調停」あるいは「遺産分割の審判」を申し立てます。

3.名義変更や相続登記をする

外国籍の相続人が不動産の名義変更を行う場合、相続登記手続きを行います。この手続きは、日本国籍の相続人の場合と基本的な流れは同じですが、外国籍の相続人においては特定の書類が必要となります。

相続登記においては、相続関係を証明するため、被相続人(亡くなった人)の戸籍謄本または除籍謄本が必要です。これらの書類は被相続人の履歴を示し、相続人の関係を確認するために提出します。外国籍の相続人も、被相続人の戸籍謄本か除籍謄本が必要です。

また、外国籍の相続人には、外国籍に関連する書類が必要です。これには、相続人の戸籍謄本が該当しますが、外国籍の相続人には戸籍が存在しない場合があります。その場合、在外公館や公証人などの協力を仰ぎ、相続関係を示す書類を取得しなければなりません。

また、日本在住の外国籍の相続人は、住所を証明するために住民票の写しを提出します。外国籍の相続人には特定の要件に基づいて住民票の写しが交付されます。

平成24年(2012年)7月9日に外国人登録制度が廃止され、代わりに中長期在留者や特別永住者などの外国籍の方々には住民票の写しが交付されるようになりました。この措置により、外国籍の相続人が住民票の写しを取得できるようになりました。

国籍の相続人に交付される住民票の写しには、外国人登録制度が廃止された日以前の居住歴、氏名および国籍の変更履歴などの情報が含まれていないため、これらの情報が必要な場合は外国人登録原票記載事項証明書を取得します。

4.相続税を納める

外国籍の相続人においても、相続によって取得した財産には一般的に相続税が課税されます。ただし、以下の条件を満たす場合、日本国内に存在する財産に限り課税対象です。

  • 相続人が日本に住所がない
  • 被相続人が日本に住所を持っていない期間が過去10年以上ある
  • 被相続人の住所が過去10年以内に日本にあったものの、相続開始時点では存在しない、または留資格を持つ外国人である

国際相続は弁護士のサポートの必要性が高い

国際相続は、異なる国の法律や国際法に関連する複雑な問題を含みます。弁護士は国際法の専門家であり、異なる法域における相続手続きについて深い知識を持っています。

国際相続では、どの国の法律が準拠法として適用されるかを確定する必要があります。弁護士はこの点についてアドバイスを提供し、最適な法律体系を特定します。

また、相続手続きには、多くの書類が必要です。弁護士は、適切な書類の取得と提出に関する指導を行い、手続きの遅延やエラーを防ぐことができます。このように、国際相続において弁護士に依頼する必要性は高いと言えるでしょう。

まとめ

外国籍の相続人がいる場合は、まずどの国の法律に準拠するのか確認が必要です。また、通常とは異なる書類が必要であったり、相続税計算に複雑な面があったりするため、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。梅田パートナーズ法律事務所では、国際相続のサポートにも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

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西村 雄大Takahiro Nishimura

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相続に欠かせない税理士や司法書士、弁理士との提携で、それぞれの専門家とチーム体制で取り組みます。

特に財産に会社株式のあるケースや経営権が絡む相続問題を得意としており、税金対策や経営についても多角的な視点を持って、何が一番いいのかを考え、相続計画と遺言書をつくる必要があります。

事業承継、企業法務、会社法の仕組みにも精通している当事務所だからこそ、安心しておまかせいただけます。

経 歴

2010京都大学 卒業
2012神戸大学法科大学院 卒業
2012司法研修所
2013弁護士 登録
2014中小企業診断士 登録
2014梅田法律事務所 設立
2015経営革新等支援機関 認定
2016梅田パートナーズ法律事務所 改称

事務所概要

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著書および論文名・著書(共著):法人破産申立て実践マニュアル(野村剛司 編著/青林書院)
・法学セミナー平成26年10月号「倒産法の魅力と倒産法の学修」
・物流業界の未来を創る雑誌「物流新時代」にて「西村弁護士の法律相談室」を連載

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