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相続における「特別受益」とその持ち戻しとは?対象や計算方法について解説

2023.7.29

この記事を監修した弁護士

弁護士 西村 雄大
梅田パートナーズ法律事務所

大阪弁護士会【登録番号 49195】

生前贈与や遺贈を受ける場合、特別受益とその持ち戻しについて確認が必要です。生前贈与を受けた分については相続財産に含めて法定相続分を計算しなければなりません。特別受益を考慮せずに財産を分割すると、生前贈与や遺贈を受けた人が得になることで不公平が生じます。

本記事では、相続における特別受益とその持ち戻しをテーマに、対象となる財産や計算方法などについて詳しく解説します。

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特別受益の持ち戻しとは

特別受益の持ち戻しとは、共同相続人が被相続人から遺贈、婚姻・養子縁組のため、または生計の資本として贈与を受けた「特別受益」を、相続人の間で公平を図るために、被相続人が相続開始時に有していた遺産に特別受益の価額を加えることを指します。

簡単に言えば、特定の法定相続人が事前に財産を受け取っていたのに、それを考慮せずに相続割合を決めてしまうと不公平が生じるため、受け取っていた財産を相続財産に持ち戻して計算すべきとするものです。

特別受益の対象

特別受益の対象となるのは「遺贈」「婚姻か養子縁組、または生計の資本として行われた贈与」の2つです。婚姻や養子縁組における贈与としては、支度金や持参金などが代表的です。生計の資本として行われた贈与の代表例としては、相続人が家を建てる際の敷地として贈与された土地が挙げられます。

学費については、以前では高校や大学における学費が生計の資本として行われた贈与に含まれていましたが、現代では高校や大学への進学率が高いことから、特別受益とは認められない傾向があります。その判断には、相続人の財産額や学歴などさまざまな要素を踏まえる必要があるため、自己判断せずに相続に強い弁護士に相談することが大切です。

生命保険金(死亡保険金)は、受取人の資産として扱われるため、特別受益ではありません。しかし、保険金の受け取りによって他の相続人と著しい不公平が生まれる場合は特別受益となる可能性があります。

特別受益に時効はない

特別受益の対象となるものに時効はないため、数十年前の贈与でも特別受益とみなされる可能性があります。ただし、時間経過によって贈与された価額が変動することがあるため、相続開始時点における価額で評価します。

特別受益の計算方法

特別受益の持ち戻しを行う場合における相続分の計算方法について紹介します。

相続財産に、特別受益にあたる価額を加えて、みなし相続財産を算出します。みなし相続財産に法定相続分を乗じて、一応の相続分を算出します。さらに、一応の相続分から特別受益にあたる価額を差し引くことで、相続分を算出できます。

例えば、相続財産が2,000万円で、長男・次男が相続人とします。このうち、長男が500万円の生前贈与を受けたとしましょう。この場合、みなし相続財産は2,000万円+500万円=2,500万円です。

相続人が2人の子だけの場合は、法定相続分は1/2ずつです。長男の場合は、2,500万円×1/2-500万円=750万円と、法定相続分を乗じたうえで特別受益額を差し引く必要があります。特別受益を受けていない次男は差し引く必要がないため、2,500万円×1/2=1,250万円が相続分となります。

生前贈与をムダにしないための対応方法

特別受益という仕組みがある以上は、特定の相続人に多く相続させたいからといって、むやみに多額の生前贈与をするべきではないでしょう。結局は特別受益の持ち戻しによって、特定の相続人が多く相続できなくなります。生前贈与をムダにしないために、次のように対応しましょう。

生前贈与は相続人を交えて話し合って決める

生前贈与を行う相手や贈与を必要とする理由などを詳しく説明し、相続人に理解を求めることが大切です。他の相続人が納得して同意することで、将来の相続時に争いを回避できるでしょう。

ただし、どれだけ話し合うといっても、不公平になる生前贈与だと争いが起きる恐れがあります。そのため、なるべく公平になるように配慮して贈与を行うことが重要です。

遺言書を作成しておく

遺言書を作成し、贈与した財産を特別受益の持ち戻しの対象にしないように「持ち戻し免除」という意思を明確にしておくことも1つの方法です。

特別受益となる贈与について、被相続人が遺言書に「持ち戻し免除」の意思表示をした場合、法律によってその意思表示の効力が認められます。この意思表示は、文書などによる明示的なものでなくても有効ですが、紛争を避けるために遺言書に明記することが大切です。

ただし、遺留分の侵害は認められないため、他の相続人の遺留分を考慮したものにする必要があります。

まとめ

相続における特別受益の持ち戻しは、不公平を小さくするために必要な仕組みです。その一方で、生前贈与を行った意味が失われるリスクもあります。将来、相続人間でトラブルにならないように、事前の話し合いや遺言書の作成などで対策しておきましょう。

梅田パートナーズ法律事務所では、生前贈与や相続などについてサポート・アドバイスを行っておりますのでお気軽にご相談ください。

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特に財産に会社株式のあるケースや経営権が絡む相続問題を得意としており、税金対策や経営についても多角的な視点を持って、何が一番いいのかを考え、相続計画と遺言書をつくる必要があります。

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経 歴

2010京都大学 卒業
2012神戸大学法科大学院 卒業
2012司法研修所
2013弁護士 登録
2014中小企業診断士 登録
2014梅田法律事務所 設立
2015経営革新等支援機関 認定
2016梅田パートナーズ法律事務所 改称

事務所概要

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著書および論文名・著書(共著):法人破産申立て実践マニュアル(野村剛司 編著/青林書院)
・法学セミナー平成26年10月号「倒産法の魅力と倒産法の学修」
・物流業界の未来を創る雑誌「物流新時代」にて「西村弁護士の法律相談室」を連載

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